創作アイデアの盗み方 「魔法使いの嫁」の盗み方
今回は『魔法使いの嫁』を取り上げますが、どうやらこの作品はアニメと原作では描かれ方(主に時系列)が違うようなので、アニメ版に限定して書く事になります。
まず『魔法使いの嫁』について書いた記事はこちら。
「創作アイデアの盗み方 基本編」はこちら。
では行きましょう。
特長から盗む
『魔法使いの嫁』の特長として挙げたのはこの三つ。
- 絶望した少女、喪失した少女
- 魔法という驚き、未知の世界
- 成長と変化
絶望した少女、喪失した少女
これはある程度幅広く捕らえた方がいいでしょう。
恋人に振られた・大事な友人と離れ離れになった・大事な持ち物をなくした・自信を喪失した・好きなアニメが終わった、等。ギャグも可能でしょう。
性別も女性にこだわる必要はなく、少年からお年寄りまで書きたいテーマや書ける事によって変わって来ます。
しかし、失ったものが何であるのか。それについてはしっかりした理由付けを行う必要があります。
ちなみに『魔法使いの嫁』の主人公は、愛情を与えられなかったという女の子です。なので最初から与えられなかった何か、というのもありでしょう。
魔法という驚き、未知の世界
そしてそんな喪失感に囚われた人物が未知の何かに出会い変わって行きます。
それは単に人付き合いであってもいいし、この作品のように今まで知る事のなかった(もしくは説明が出来なかった)世界や存在であっても構いません。
思い付く範囲でザッと挙げてみたいと思います。
超能力者とその力・異世界人と魔法やモンスター・高次元体の生命・あの世の死神や死者、閻魔・宇宙人と超科学・等。普通の人だと思っていたら実はスパイだった、何てのも面白いかもしれません。
そんな人たちや力の存在に驚いたり惹きつけられたり、または恐れたり悲しんだりしながら主人公は失った何かを取り戻していきます。もしくは単に心の隙間が埋まるだけかもしれません。
成長と変化
これが一番の問題じゃないか、と個人的には思っています。人の成長には段階があります、いきなりポンと変わってしまう人も居るでしょうが実際は少しずつです。
これも何を書くか、どれぐらいの長さの物を書くかによって変わって来るんですが、書く人間はその成長や変化についてある程度知っておく必要があります。
リアルな話にすると、成長したと思っていたらまた元に戻ってしまったり、良く分からないキッカケで変わってしまう人も居ます。
まぁフィクションなのである程度都合の良いように書いていいんですが、余りに簡単に書いてしまうと嘘臭くなる、もしくは短い物しか書けない事になります。
モデルが居るかどうか
身近に立ち直ろうとしている人、もしくは立ち直った人が居るとその経過が分かるので観察したり体験を聞くのも手でしょう。もちろんそれが自分自身である場合もあります。
大筋
何かの出来事によって主人公は喪失感に囚われる。これは最初のつかみでもあるので、ショックを受ける主人公も含めてしっかり描写するべきでしょう。もちろん日常シーンから入り何かのキッカケで思い出す(回想シーンに入る)といったミステリー形式で見せるものありです。
そして新たな出会いや環境の中で知らなかった人たちや経験によって少しずつ変わって行く。どのような経験をするかも大事ですが、その際に主人公が何を感じたかも重要になってきます。
主人公がただの傍観者ではなく体験として何かを感じる立場に居るか? それに当事者として関わる動機はあるか? 等、主人公を育てるような気持ちも必要なのかもしれません。
一つ一つの出来事の後には主人公に少しの変化が見られます。それによって感じる新たな葛藤、心の動揺。この辺りがどこまで描けるかによって作品の息の長さが決まって来ると思います。
一例
では今までのアイデアを組み合わせてザッと話を作ってみます。必要のない方はご自分の創作に掛かってください。
恋人に振られたショック生きる気力を失くしてしまった主人公。目が死んでいると言われ、なぜか本当に死人の姿が見えるように。
死者の言葉を聞き、共感したり慰め合ったり。何なら取り憑かれてあの世に連れて行かれかけたり……。
そんな時に妙に明るい女の子に助けられます。彼女は霊能者だとか胡散臭い人物ですが、別に金を取られる事もなく、そして半ば強引に主人公をあちこちへ連れ出します。
生きたくても生きれなかった霊、復讐心から死んでいる事に気付いていない霊、恋人を振らなくてはいけなくて辛さの余り自殺した霊、等。
悲しみや恐怖から徐々に自分を取り戻して行く主人公。そして自分の為に必死になって動いてくれる女の子に好意を抱き始めるが……。
オチは大体読める感じですかね。
他にも兄弟や親の形見を失くしてしまった主人公が宇宙人と出会い、様々な出会いの中で家族の思い出が蘇って生命力を取り戻して行く話なんかも面白そう。
ジャンルを変えるについて
既にいくつかのジャンルは挙げましたが、自分なりに得意なジャンルをリストアップしておく・もしくは勉強しておくのも一つの手です。
ただ最近はジャンルに囚われない作品も出て来ています。『魔法使いの嫁』に登場するキャラクターにもドラゴンのようなファンタジーの王道的存在からホラーに出て来る悪霊のような存在、更に猫の王等とバラエティーに富んでいます。
他にも『物語シリーズ』のように妖怪や吸血鬼といった全く違ったジャンルのものを「怪異」という言葉でまとめてしまうという方法もあります。
なので、このジャンルならこれ! と決め付けてしまうより、ある程度柔軟な形で作品の中に盛り込むというのも一つの手段なのかもしれません。
最後に
個人的には簡単に盗めるタイプの作品だと思っていませんが、書ける人には難なく書けるんでしょう。なので無理して挑むものでもないと思います。
ただ自分自身にそういった経験があり、しかもそれがある程度客観視できる方にはぜひとも勧めたいジャンルではあります。
今も苦しんでいるであろう自分に似た人を助ける気持ちで書くものいいんじゃないかと思います。