アニメ「ID:INVADED イド:インヴェイデッド」 13話の再考察
全話視聴済み。その観点から気付いた事や残った疑問に可能な限り回答を出したいと思います。完全ネタバレありです。
13話は最終話。早瀬浦局長こと裏井戸との戦いに決着、そして飛鳥井木記の元に向かう百貴さん。と、全てに一応の解決を見ました。
世界にとっての役割
「そこで思い出して、あなたの事を! あなたが世界にとって成すべき事を!」
12話、聖井戸が局長の言葉によってイド嵐に呑まれる際の台詞です。
「世界」という言葉が使われています、これで思い出す台詞がありました。
「世界のために何か自分の役割が用意されていると信じることは、おかしいだろうか?」
これは1話の序盤のもの、トレーラーでも使われている台詞ですね。
「そうして俺は理解する、この世界の全てに意味があると。俺の生にも意味があり、彼女の死にも意味がある。そういう世界でしか出来ない仕事があり(以下略)
これは最後のモノローグです。
1話で用意された役割とは名探偵としてミヅハノメ、もしくは飛鳥井木記によって与えられた役割でした。酒井戸はそれに従っているだけです。
そして12話で本堂町が「思い出して」と言っているのは鳴瓢本人の記憶と役割です。記憶を失った名探偵ではなく鳴瓢本人のもの。
似た言葉でも意味が大きく変わっていますね。
自分自身の生に意味がないと感じていた鳴瓢が自分の事を思い出し、その役割を果たす。その結果としてラストの「俺の生にも意味があり」となる訳です。
似た言葉が立場の変化によって意味が変わる。見事な脚本です。
早瀬浦局長はどうしてイドの中のイドで取り押さえられたのか?
考察というよりは想像・妄想になります、根拠は薄いです。
まずはこのシーン、二人の名探偵によってイドの中のイドへ送られた早瀬浦局長ですが、送られた瞬間に鳴瓢によって取り押さえられています。
これがどうも不思議に感じてしまう。
イドの中のイドでは最初の殺人を犯す前に戻る、作中でそう言われています。しかしそれはただ単に戻るだけで周囲の人間の行動が変わる訳ではなかった(本人が変えたもの以外は)。
なのでこの場面でどうしてイドの中のイドに居る鳴瓢は局長を取り押さえる事が出来たのか……?
イドの中のイドでは、どうして殺人を犯す前に戻るのか?
疑問といえばこれも疑問ですね。イドの中のイドで中に入った人間は最初の殺人を犯す前に戻る、これには何か意味があるんでしょうか?
そもそもイドに潜るには殺人鬼である必要があり、飛鳥井木記の夢には殺意のようなものが必要でした。そんな人間を殺人前に戻す事にどんな意味があるんでしょう?
いくつもの解釈が可能だとは思いますが、個人的には飛鳥井木記の影響ではないかと考えます。
飛鳥井木記はミヅハノメの一部(もしくは中心)として蔵に運用されています。しかし彼女がシステムの一部として服従しているだけかというとそうでもない。
12話の早瀬浦局長のイドで死んでいるカエルちゃん、しかし裏井戸を見つめるようにも見えます。局長の顔を見せて裏井戸をイド嵐に呑ませるという復讐を企てたりもしました。
この様にミヅハノメシステムやイドの中のイドでは飛鳥井木記がただ利用されているだけでなく、なんらかの影響を与えていると考えて間違いないようです。
なのでこの問い(殺人を犯す前に戻る)に対する回答は、殺人前からやり直してという飛鳥井木記のメッセージではないか、と想像します。
これらを踏まえた回答
どうして局長はイドの中のイドで鳴瓢に取り押さえられたのか? この答は飛鳥井木記の忖度ではないかと考えます。
飛鳥井木記が局長をイドの中のイドで捕まえたかった、取り押さえたかったというのが理由ではないか。
考えてみるとその前にイドの中のイドへ行った鳴瓢と本堂町は殺人を犯すかなり前(本堂町は当日ですが)から始まっているのに、早瀬浦局長だけ直前です。これにも何か圧が掛かっていると考えてもおかしくはないでしょう。
まぁちょっとふざけた回答はありますが、それ以外に浮かばなかったのでご容赦下さい。もっとスマートな解がきっとあるんでしょうけどね。
イドの中のイドは壊れない?
この画像は10話で鳴瓢と本堂町が出会った後、イドの中のイドの世界が壊れていく風景です。
最終話で早瀬浦局長がイドの中のイドへと送られ、その世界は壊れかけなのでは? という疑問がいくつかあったので考えてみます。
まず10話でイドの中のイド世界が壊れた原因ですが、観察者が二人居たからでした。鳴瓢と本堂町という二人がそれぞれに用意された別々の世界があるのにも関わらず、出会ってしまった。
時間・季節・周囲の人間(穴空きの被害者が生きている)も違うはずなのに同じ場所で鉢合わせてしまった。その矛盾に世界が耐えられなくなった、というものでした。
確かにその後、鳴瓢が排出されても世界は崩壊を続けています。ならこのままイドの中のイド世界は崩壊してしまうと考えるのも間違っていない気はします。
ハッキリとした回答は出せません。しかしそれでも、イドの中のイドを飛鳥井木記のイドとするなら、彼女のイドが崩壊するなんて事があるんでしょうか?
それと、イドの中のイドが通常のイドと同じ仕組で出来ているなら、パイロットが排出されるとイドは元の状態に戻るはずです。そして再度、別の人間がイドに入ると元の状態に戻る。
これらの事を考えると、イドの中のイドは高い確率で壊れないと想像できます。
なので早瀬浦局長、そちらでごゆっくりお過ごし下さい!
必ず帰る
これはただの妄想です、それを前提に読んで下さい。
「ちゃんと帰って来るよね? うちに」
「うん……、必ず帰る。必ずちゃんと帰って来るから」
これは10話、イドの中のイドで鳴瓢が家族に別れを告げるシーンです。
「帰る」という言葉が使われています。
「ああ……、いつかきっと、本物の場所に。ただ……、今じゃないだけなんだ」
こちらは最終話の終盤、イドから排出された鳴瓢が本堂町に肩を借りて歩き出すシーンの回想部分です。
この鳴瓢が帰ると言っている本当の場所とはどこなんでしょう? 家族の二人はもう死んでいる、イドの中のイドには局長が居るので二度と行く事はないでしょう。
ならその場所というのはあの世の事でしょうか? もしくは誰も居なくなったけれど思い出が沢山ある家?(マンションの一室だったようなので、事故物件として次の住人が入っている可能性もありますが)
それもきっと間違ってはいないと思うんですが、ここからが妄想です。
鳴瓢にとって帰る場所とは家族の元です、でもその家族はもう居ない。帰ると言えばカエルちゃんであり飛鳥居木記なんですが、もしかしたらカエルちゃんは鳴瓢の家族としていつか帰る場所になるのではないか……?
だからカエルちゃんという名前になったのでは──。
と、さすがに少し無理がある感じなのでこの辺りにしておきます。
眠れるイドのカエルちゃん
「鳴瓢、本堂町、準備はいいか?」
「バッチリです!」
「はぁ……」
最終話のラスト、再び動き出した蔵でイドに潜ろうとしている鳴瓢と本堂町の台詞です。
鳴瓢は気だるそうな顔をしていますが、彼はしっかり眠れるようになったんでしょうか?
イドの中のイドで奥さんに「ちゃんと寝れてる?」と言われ「いや……」と答えていました。あの返事は現実の話でしょう。恐らく鳴瓢は家族を失ってから悪夢にうなされてしっかり寝ていない(3話の花火師回参照、悪夢で目覚めてます)。
過去から解放された事で毎晩ぐっすり眠れている事を願いますが、それとは対照的な人物が居ますね。
はい、飛鳥井木記です。
彼女はずっと眠り続け、いつか救ってくれる誰かを待っているんでしょう。それはやはり鳴瓢になるんでしょうか?
余談
どうでもいいですが、このカエルちゃんと『眠れる森の美女』を掛け合わせたら面白いんじゃないか、とフと思ったんですね。七人の小人を七人の連続殺人鬼にしてネタ記事が一つ書ける! と思ったんですが、『眠り姫』と『白雪姫』を混同していたようでやめました。
七人の小人は毒リンゴの『白雪姫』ですね、
13話の役割
早瀬浦局長である裏井戸との戦いに決着! そして被害者である飛鳥井木記は、残念ながら救う事は出来ませんでした。少しの希望があるだけで、後は現状維持でしたね。
解決編という感じで案外あっさり終わった感はあるかもしれません。でもあれだけ意味不明だったストーリーがこれだけまとまった形で終わっているなら文句はないでしょう。
その一方で現状維持という終わり方には賛否あるところだと思います。個人的にも現状維持の正義には疑問があるんですが、人物の成長(変化)がしっかり描かれていたのでさほど気にはなりませんでした。
というか、最初に観た時には解明されずに終わった謎が沢山あったのでそっちが気になって、とてもじゃないですが余韻を感じる余裕もなかったんですよね。
これからどうしよう……
とりあえずこれで再考察は終了。まだ引っ掛かっている部分はありますが、記事化せずに置いておきます。本家ツイッターで質問の受付と、その後に解答の動画が作られるようなのでそれを待ちます。
個人的にはこの作品に関するQ&Aを作ろうと思っていますが、それも別記事を書きながらのんびりやるつもりです。
とりあえずは、ありがとうございました! というのと、もうちっとだけ続くんじゃ、といったところでしょうか。
個人的な考察はこれで終わりますが、全ての謎が解けたわけではありません。今後の名探偵(考察者)の活躍に期待します!