アニメをっち

アニメの感想、持論などを好き勝手に書いております

アニメ「天晴爛漫!」 1話の感想、分析

 3話を観て惚れ込んだので1話から分析して行きます。

 

 この記事はアニメ『天晴爛漫!』の1話を観て個人的に面白いと思った部分を取り上げたり、分かりづらい部分を解説しながらアニメ視聴をより楽しめるようにしようというものです。

 

 視聴済み前提で進めるのでネタバレが嫌な方は視聴後に読むのをおススメします。

 

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©2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会

 

 

 主人公が獄中に居るシーンから始まる意味

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©2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会

 

 OP後、主人公の空乃天晴(そらの あっぱれ)は投獄されています、そこで何か研究をしているようですね。

 この後、天晴は何事もなかったようにここから抜け出しますが、これが非常に暗示的で面白いです。

 

 1話を最後まで観ていれば分かると思うんですが、天晴はこの場所(日本・家・置かれた境遇)に居る事がそのまま投獄されているようなものだった。

 そしてその場所から自分の力で抜け出す、というのが最初のシーンで描かれているんですね。

 

 気付きにくいですが、見事なシーン構成です。

 

何から逃れたかったのか?

 そんな天晴は何に嫌気が差していたんでしょう?

 

働くこと?

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©2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会

「お前ももう十九だ。下らない事ばかりしてないで、家の仕事を手伝え!」

 

 この後に「働かないなら出て行け!」とも言われています。なら天晴は働くのが嫌だったのか?

 

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©2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会

「お前も働け!」

 

 1話の終盤のシーン、船で水も食料もなく放浪していたところを別の船に拾われます。侍の一色小雨は船内の掃除をしているけれど、天晴はずっと船の図面を見たり整備士(?)たちと話している。

 

 一色にしてみると労働は体を使う事や汗を流す事なんですが、天晴も働いていない訳ではない。書物を読み漁ったり船員と話し合ったりと、かなり勤勉に見えます。

 ここの価値観の違いも面白いですね。

 

 残念ながら天晴によってこの船の動力が改善された等の描写はないので、ここでの天晴の働きが何か役に立ったのかは不明。でも船長の様子を見るとそれほど悪くないようです。

 

何の役にも立たない

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©2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会

「何の役にも立たないんだから、せめて人様に迷惑を掛けるなって言ってやって下さい」

 

 これは天晴の兄の台詞。

 天晴は大商人の次男らしいです。確かに商人からすれば、カラクリやメカニックの技術は何の役にも立たないでしょう。

 

 天晴にとって不幸なのは、この場所に自分の価値を理解してくれる人間が一人も居なかった事なのかもしれません。

 

じゃあ何の話だ?

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©2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会

「私も一緒に頼んでやるから一緒に牢に戻れ」

「断る」

「なっ……!」

「あそこはつまらん」

「つまるつまらんの話じゃないだろ?」

「じゃあ何の話だ?」

 

 非常に本質的な会話ですね。天晴にとっては面白いか面白くないかしか無いんです、他の事には興味がない。それに対して侍の小雨は常識的、というか決まり事やシキタリで動いています。

「じゃあ何の話だ?」と言われて小雨はまごつくだけで返す言葉を持っていません。常識で当たり前になっている人間には言語化できない、これは仕方がない事です。

 

 しかしこの天晴のキョトンとした目。本質や見たい物しか見ない目なんでしょうけど、軽い恐怖まで感じてしまいます。

 

 

 他にも「手を差し伸べてやってるのに」「頼んでない」というやり取りがあったりと、小雨の言動はこの社会の常識的なものだと思うんですが、押し付けがましくも見えます。

 なので天晴はそういった社会の決まり事が嫌になったんでしょう。

 

 他にも牢の中の上限関係が一目で分かるようになっていたり、「お前ももう十九だ」という台詞の社会性・世間体。1話の台詞は本当に計算されたものが多いです。

 

 

合理主義者?

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©2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会

「これを」

「お守りなんてただの迷信だ」

 

 恐らく唯一、天晴を可愛がってくれていたであろう姉からお守りを受け取ります。こういった小物が後々どんな場面で使われるのか、少々ワクワクしてしまうんですがそれは置いといて……。

 ただの迷信と断言してしまう天晴は合理主義者に見えるんですが、その前に。

 

主人公の格好

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©2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会

 

 その格好ってどうなの? と思ってしまいますね。

 他の感想やレビューを見たんですが、一番多かったのは主人公のキャラデザインについてだった気がします。

 

 まず女の子に見えた、髪が爆発してる、口元のそれ何? といった辺りでしょうか。

 髪は恐らく適当に結んでるんでしょう、左右の大きさも違うし。髪が長いと女の子に見えてしまうのは最近のアニメの宿命です、鼻筋なんてないんだよ!

 しかし口元のそれは何なのか……? 正解かは分かりませんが、検索して出て来たのはこの辺り。

 

www.ozmall.co.jp

歌舞伎を象徴する「隈取」ですが、これは、顔の筋肉や血管を強調したお化粧法で、人物の役割や感情を表現しています。

 

 「隈取(くまどり)」というものでしょうね。

 

 他にも紅白のヒモを体に巻いてますが、名称が良く分かりません。「ねじり紐」辺りでしょうか……? こちらは着物を固定するのに使ってるようなのでまだ許せる、かな?

 着物の下に着てるのはオーバーオールのようですね。この辺りはメカニックしてるという。

 

 和・洋が入り混じって何やら絶妙な感じにあれしてますね。いや、慣れれば全く問題ないんですが。

 しかしキャラクターとして合理的なのか無駄が好きなのか判断に迷う服装です。

 

 

FROM THE EARTH TO THE MOON

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©2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会

 

 作中に登場するこの本ですが、『月世界旅行』という実在する本のようです(古い本なので青空文庫にあるかと思ったけど無かった)。読みは「げつせかいりょこう」、「つき」でいいじゃんと思ってしまいますが。

 

ja.wikipedia.org

現代では本作は、極めて風刺要素の強い小説だと認識されている。

 

 SFかファンタジー作品のように描かれていますが、風刺要素が強いようです。『ガリバー旅行記』みたいなもんでしょうか?

 

 まぁ風刺というのはその社会に居ないと分からないので、異国である日本人が読めば解釈も変わって来るでしょう。

 科学考証についてはおおむね不備がない部分もある、とwikiには書かれています。意図的に考証無視した箇所もあるのだとか。

 そういう意味ではピッタリの作品なのかもしれません。

 

 

 ちなみにこの『月世界旅行』ですが、映画化されており著作権も切れています。なので動画を探せば見つかりますが、当然古い映画なので白黒およびサイレントです。

 見慣れていない方にはおススメできませんが、飛ばして観てもあらかたの内容は見て取れるかな、という感じ。

 

 リンクは貼らないので興味のある方は各自で検索してみて下さい。

 

言語問題

 もう一つの突っ込みどころであるのがこれ。天晴も小雨も日本人なんですが、何の引っ掛かりもなくアメリカ人と会話してますね。

 天晴に関しては『月世界旅行』を原文で読んでいるので英語が出来た可能性はあるんですが、小雨は多分無理でしょうね。船旅の間に覚えた、という解釈も不可能ではないですが……。さすがにちょっと覚えが良すぎる?

 

 なのでこの辺りにも目をつむった方が良さそうですね。アニメでは良くある事です。

 

二つのスタート

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©2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会

「ここがアメリカ、ロサンゼルス!」

「おーまいがー……」

 

 1話はOP前に大陸横断のレースが始まり、回想として天晴と小雨がアメリカに来るまでのストーリーが描かれました。

 レースの開幕とようやくスタート地点(アメリカ)に着いた二人という二つの始まりで構成されています。活劇のように見せかけてかなり計算された作品ですね。

 

 天晴という好きな事しかやらない・興味がないといったキャラクターを主役に持って来るのも意図的でしょう。

 と、この辺りにはまた触れるかもしれません。

 

ここまで

 他にも取り上げたかった部分はあるんですが、調べ物をしていたら思ったより時間を取ってしまった。なのでここまでとします。

 

 とりあえずはストーリー上の気になった点はこれで良しとして、次は違った視点で記事を書こうと思っています。なので興味のある方はお付き合い下さい。