アニメの多様性に必要なもの
興味深い記事があったのでその内容を分析しながら書いてみたいと思う。
その記事はこちら。
記事で指摘されている問題点
まずは記事の中に挙がっている問題点を列挙してみたいと思う。
- 映画祭や評論家などによる賞が少ない
- 新人発掘・育成の場の為のコンテストが機能していない
- 日本は文化を軽視している
- ジャーナリズムが存在しない
- 批評家が居ない
これらの指摘が正しいか? もしくは日本という特殊な国でこれらが機能するか? という問題は置いておく。それよりなぜこれらの事が必要なのかというポイントに絞って考えてみたい。
1.賞が少ない
賞が多くあればどうなるか? これは冒頭の記事にもあるように「興行だけでは計れない指標」がある事になり、賞を取る事である程度の知名度も上がるという利点がある。
一応、日本のアニメにもランキングや大賞めいたものはあるが、主にそれはファンによるもので人気投票の枠を出ない。
というかそもそも、知名度の高い作品がランキング上位を獲得してしまうので余り意味がない。
2.新人発掘・育成の場の為のコンテストが機能していない
業界そのものに新しい才能を取り入れる事や時代に合った作品を生み出す土俵は必要だと思う。でないと今のテレビのように高齢者しか見ない滅びていく文化と化してしまう。
記事によると、一応そういう場があるらしいのだけれど(聞いた事ないけど)その後も活躍できるようにはなっていないらしい。
3.日本は文化を軽視している
これが不思議で仕方がない。思い切り個人的な意見で申し訳ないが、日頃から文化やコンテンツの話しかしていない人間だ、軽視するなんて奴はどこのどいつだ!?
と一瞬思ったが、そもそも自分が社会の隅っこの人間である自覚がない訳ではない。
それに日本人は真面目だ。真面目や正直を尊ぶ国(でも恐らく昔からではあるまい)なので、文化や芸事は遊びの一部として軽んじられる。
でもそんな真面目さがAIを始めとするテクノロジーに仕事を奪われたら何が残るのか?
と、この記事で扱う内容ではないのでこの辺でやめておく。
ただこれからは労働ではなく文化そのものがコンテンツであり価値を生み出すようになって来る(もしくは既になっている)。なので文化を軽視する人間は残念ながら奴隷として働くしかない。
4.ジャーナリズムが存在しない
記事によると、
クリエイターの待遇面を除いては、業界の問題を指摘するような言説は皆無です。
となっている。つまり外部からの目がないと業界の古いシキタリやお約束がずっと続いてしまう、それがどんなに理不尽であってもそれが常識とされまかり通る。
それがおかしな事なら「おかしい」と言えるだけの土壌がないと、そこに居る全ての人が狂ってくる。これはもう既にこの社会のあちこちで起こっている事だ。
恐らく賃金の問題だけではないのだろう。
5.批評家が居ない
作品について語る事が出来ない。もしくは語っていても内容が稚拙である。
これについては自分も含まれるので余り大きな口を叩けない。他にもこんな記事があったので興味のある方は一読をおススメする。
ポイントを絞る
これらの問題を個人的に分類してみたいと思う。
価値基準の少なさ
まず、1.と5.「賞」と「評論家」が少ない事によって価値基準が少なくなる。その結果、売り上げ以外の価値が見えず、売れ筋の作品しか作られなくなる。
最近の例でいうと「なろう系」といわれるものや「石鹸枠」といった作品群だろうか。
業界の新陳代謝
次に2.と4.の「新人育成」と「ジャーナリズム」だが、これがないと業界そのものが固定化する。古い慣習の中で身動きが出来なくなる。
客層も創り手にも新しい空気が入ってこず、ただ老朽化する。
アニメは元々子供の為のものだったはずだが、いつしか大人でも子供でもない人向けの作品が多くなっている。これに関しては良し悪しあるのでこれ以上触れないが、客層を広げる事で子供向けと大人向けの作品が少なくなったのは確かだろう。
社会的土壌
3.の「文化の軽視」はクールジャパン戦略と一緒に考えると本当に腹立たしい。詳しく知りたい方は「クールジャパン 失敗」で検索すれば実例が嫌ほど出て来る。
そうやって文化を自分たちの食いものにしようとしか考えてない人たちが居ると育つものも育たなくなる。
結論
多様性を保つには(元からそれがアニメ業界にあればだが)、価値基準の多さ・業界の新陳代謝・社会的土壌が必要になる。
こんな結論に辿り着きました。
それが賞やコンテスト・ジャーナリズムや批評家という形を取るのかは分からないが、もしそれらのものが日本の土壌に合っていないのだとしたら違う形で同じものを確保する必要がある。
それが何なのかは分かりませんが、一個人としてはとりあえずこのままつたない批評や感想のブログを続けてみるつもりです。
そしてその中で見えてきたものを記事にする、もしくは逸脱して別の事を始めるかもしれません。
以上、アニメ業界の寄生虫によるたわ言でした!